583+

[説明・注意書き]
※R18。一瞬で終わる感じのエロです。
※中3設定です。
※受→攻のフェラと、それに伴う受け優位描写があります(途中で形勢逆転します)。

1:2


 やられっぱなしは我慢ならない性分なので、1ポイント取られたら2ポイント取り返す。さらに1ポイント取られたら、こっちもさらに2ポイント。倍にして返し、これでゲームは俺のものだ。テニスではなく射精の回数の話である。

「日吉、やっぱり反応めちゃくちゃかわいいな」

 最初の1ポイントを取られたばかりの俺の上で、鳳は腹立たしいほど甘い笑顔をみせた。窓からさしてくる夕日を背に浴びながら、ベッドサイドにあるティッシュを取り、俺の性器にまとわりついた精液をぬぐっていく。そんなことは自分でやる、と言いたいところだが、射精直後の体はぐったりと沈み込み、今は起き上がる気力も湧かなかった。

「……うるせー。俺に対して『かわいい』とか、イカれてるだろ、お前」
「え、そんなことないよ。っていうか、それだと先輩も新入生もみんなイカれてることになっちゃうだろ」
「は?」
「だって先輩たちはみんな日吉のこと、『かわいいヤツ』って言ってたし。一年生だって最近、『日吉部長って実はかわいい人だよな』とかウワサしてたし」
「……」

 なんつー不愉快な噂だ……と閉口していたら、ティッシュを捨て終えた鳳が隣に寝そべってきた。俺の頬を撫でながら、「でも」と言葉を続ける。

「日吉がかわいいのはみんな知ってるけど、日吉が“あんなに”かわいいのは俺しか知らないんだよな」

 と言って、鳳はうれしそうにほほえんだ。あんなに、の部分に込められたニュアンスは、きわめて正確に俺に伝わった。

 カッと顔が熱くなり、脳裏には数分前まで行われていたゲームの記憶がよみがえる。そこで自分がどんなプレーをしてしまったのかも。

 最初のポイントは俺が取るつもりだったのに、いつのまにか組み敷かれていて、いつのまにか性器を舐められていた。反撃しようとしたけれど、弱いところを何度も何度もなぞられるうちに全身の力が抜けていき、なさけないが快楽に負けた。ぱくりと咥えられ、すみからすみまでくまなく舌を這わされて、舌が届かない部分はデカい手でめちゃくちゃしごかれた。とくに焦らされることもなく最短コースで、一直線に限界の手前まで引っぱっていかれて、耳のすぐ近くで「日吉、そろそろイきたい?」とか囁かれたら、もう力無くうなずく以外の余裕は残されていなかった。

 俺また飲むよ、とも囁かれたが、俺は本気で怒って——もとい、本気で怒っているように見せて——それだけは阻止した。決してイヤなわけではないけれど、俺が出した直後、手で口を押さえながら段階的に精液を飲んでいく鳳の顔が目に入った瞬間の罪悪感がヤバいのだ。罪悪感と同時に興奮もヤバいが、どちらにせよ中学生のうちからあんな感覚に慣れてしまうのは絶対にいけないことだと思う。

「日吉」

 名前を呼ばれ、顔を上げたら唇を奪われた。キスと同時にのしかかられ、脚を絡められる。服はさっき脱がし合ったので、俺の腿には熱をもった鳳の性器がじかにぶつかった。少しずつ軟化していく俺のものとは反対に、鳳のそれはキスの最中にどんどん硬度を増していった。——今度こそ俺のターンだ。

 舌をのばす。間髪を入れずに攻撃を繰り出し続けながら、抱き合ったまま鳳の体を押し返し、ベッドの上でぐるんと形勢を逆転してやる。さっきはあんなに強引に来たくせに、いちど俺が主導権をとってしまうと鳳は不思議なくらいおとなしくなった。深く、容赦なく入ったキスのさなかにいくつも弱い声が上がったが、鳴かされているのはもう俺じゃなかった。

「ん、っ……」

 際限なくまじりあう熱い舌、熱い息。重なった体が汗ですべる。空気が薄くなってきて身を離したら、鳳は完全に骨抜きにされたように、焦点を失した目で俺を見上げた。俺も鳳も息が上がりすぎていて、はあはあと速く繰り返される呼吸の音がうるさいくらいだった。

「はぁ、っ……。ね、日吉、」
「うん?」
「その、……もっと。キス以外も全部、もっとしてほしい……」
「……言われなくても、全部倍にして返してやる」
「んっ……」

 溶けきった声で「もっと」なんてねだってきたことを後悔させてやる。全部ぜんぶ二倍にするつもりで反撃していく。俺の二倍喘がせて、二倍感じさせて、唾液も涙も汗も先走りの液もなにもかも二倍、分泌させる。

「あ、っ……だめ、日吉、俺もうっ——

 鳳の性器はキスだけでガチガチになっていたので、キスを続けたまま手の中でいじめてやったら1ポイント目はすぐに奪取できた。枕元に用意しておいたティッシュを数枚取り、俺からの愛撫によってあっけなく噴き出した白い液を受け止める。限界まで膨張したそれはビクビクと痙攣するように暴れながら、幾度かにわたってなまぬるい精液を吐き出した。そして射精を終えてもなお芯をとどめていた。俺はティッシュをゴミ箱に放り、2ポイント目へ向かうべく攻撃を再開する。

「ちょっ……日吉、待って! ストップ! タイムっ!!」
「あるかよ、そんなルール。テニスやってるわけじゃねーんだぞ」
「だ、だって俺もうイった……からっ! いま触られたら、ぁ……っ……」

 抗議の言葉だって結局は、あまったるい声とせつなげな吐息の中に消えていく。鳳は最初こそダメとかムリとかヤダとか喚いていたが、耳や首すじや乳首など、弱点を続けざまに攻めてやったらあっというまに喘ぎ声しか出さなくなった。

 俺の体のすぐ下で、俺よりデカい男の体がひっきりなしに跳ね、びくつき、波打つ。舌先で胸を舐めれば頭を掻き抱かれ、手のひらで腹を撫でてやれば、すがるみたいに反対の手を握られる。片手をつないだまま速く激しく性器を攻め、休み、また攻め、と緩急つけて熱を煽り続けると、鳳はやがて涙まじりの声で、日吉、と俺を呼んだ。

「なんだよ」
「はっ、ぁ……日吉、っ……」
「……」

 言葉が続くわけでもない、ただ呼びかけのための呼びかけ。五本の指を互い違いに絡めて、中学生離れした握力(痛い)で俺の手を握りしめながら、鳳はまた勢いよく射精した。——これで2ポイント。

「っ……」

 白いシーツはいつのまにか、夕日のオレンジではなく夜の青に染まり始めていた。暮れていく空からの弱い光をうけ、深くなった息に胸板を上下させながら、鳳はゆっくりと体を弛緩させていった。体じゅうが汗に濡れ、頬には涙が垂れて、下腹には精液が広がっている。へその下を押し撫でれば、指先に力をこめるたびにビクン、ビクンと鋭い反応が返る。まるで叩くと音が出る人形みたいに。

 さっき自分も似たようなことを言われた気がするが——コイツが“こんなに”あられもなくダメにされた姿なんて、俺しか知らないのだ。

「……に、二回連続とか、日吉、手加減なさすぎ……。せめてちょっとは休ませてくれてもいいのに……」
「フン。お前の自業自得だろ」
「自業自得、って」
「おとなしく負かされてやるだけで終わるかよ、俺が。一回潰されたら、こっちからは二回潰すまで終わってやらないからな」
「……」

 負かされてばかりは性に合わないし、相手がコイツならなおさらだ。倍返しで2ポイント先取、逆転の達成感にひたる俺の下で、鳳はふいに表情を変えた。くすぐったがるような、照れるような、奇妙にうれしげな微笑へと。

「うん……まあ、俺もわかってて煽ってるんだけどね」
「……は?」

 思考が止まる。固まった俺の頭に鳳の手が伸びてきて、髪を、頭皮を、それから耳や頬や顎を撫でていく。いとしくてたまらない、とでも訴えるみたいに優しく、強く。

「俺、その……とにかく日吉にいっぱい触ってもらいたい、から。一回でも俺に先制されると、日吉はムキになってたくさんやり返してくれるだろ? そういうときの日吉の手の激しさとか強さとか、熱さとか……俺、全部すっごいドキドキして。すっごい好きで」
「……」
「二倍どころか三倍でも、四倍でも五倍でもいい、って思う……。体力には限りがあるから、適度に休憩を入れてほしいのもホントだけどな」

 陶酔の余韻をとどめた赤い頬が、へへ、とはにかみ笑いのために上下する。それから鳳は両腕で俺の背中を引き寄せ、やはり強すぎる力で俺の上体を抱きしめながら、

「日吉のかわいい顔も見られるし、そのうえ日吉にいっぱい触ってもらえるし。俺にとっては一石二鳥、なんだよ」

 と呟いた。

[23.05.10]


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